グループ展に出展します。
完璧に抗う⽅法 – the case against perfection –
平野泰子/衣真一郎「風景(私は知っている/整理できない)」
2022.03.12(土)〜 03.27(日)
「完璧に抗う⽅法 – the case against perfection -」は、図師雅⼈・藤林悠による企画展覧会です。企画者を含む9名と1組のアーティストが、2⼈展を隔⽉で開催していきます。第3回⽬は、平野泰子・衣真一郎「風景(私は知っている/整理できない)」 この展覧会は、アーティストの図師雅⼈と藤林悠で⽴ち上げました。2⼈展形式の美術展覧会の開催にあたり、事前にリサーチとして出展作家の制作を始めた動機、過去作のすべてについてなど、作品にまつわるインタビューを⾏い、その内容から抽出しコンセプトを作成しました。アーティストの営みについて彼ら/彼⼥らの⾔葉を通してその経験を集積し、発された表現そのものがまた⾃⾝の元へ還るまでの過程を垣間⾒ようとします。
会期:2022年 3/12(土)13(日)19(土)20(日)21(月・祝)26(土)27(日)(土、日、祝のみ開場) 開場時間:13:00 – 19:00 会場:あをば荘 住所:〒131-0044 東京都墨⽥区⽂花1-12-12 URL : http://awobasoh.com 問い合わせ:enhancement.exhibitors@gmail.com
アクセス:京成電鉄・都営浅草線・東京メトロ半蔵⾨線・東武スカイツリーライン 押上駅から徒歩14分 東武鉄道⻲⼾線 ⼩村井駅から徒歩9分 東武スカイツリーライン・東武亀戸線 曳舟駅、京成電鉄押上線 京成曳舟駅から徒歩20分
あをば荘の感染症対策についてはこちらから:http://awobasoh.com/archives/1819 ※感染対策のため、会場内に滞在できるのは5名までとします。混雑時は、長時間の滞在はお避けください。スタッフがお声がけする場合があります。
イベント情報:アーティストトークの公開 各会期の期間中に、参加作家と企画者のトークを収録、ウェブ上で公開。本展のテーマや展⽰に⾄るまでの経緯、そして各々が展⽰にどう向き合ったのか話し合います。
平野泰子の作品は三原色によって作られるグレー系の色面を矩形全体に施すことから始まる。その過程の後に、彼女は最低限の要素(何かを示すように加筆したり、そこにあったものを呼び起こすようにスクラッチをしたり)を加えているように見える。夕闇時、色の個性や距離感がなくなっていくような空間の中でなお位置を示す、そのような絵画面を平野は描く。そこには、彼女が日々見て感じ取ってきた風景への視点と感覚が漂っている。森に溶けていった彼女の感覚、月がずっと後ろをついてくるあの距離感、山並みとコップの縁を同じように感じる視点、それらが平野の絵画の中にある。彼女の話を聞いていると、彼女の感覚は、彼女のものであったり、対象や風景のものであったり、同時に両者にあったりするのだなと感じる。彼女はそこを行き来しているし、時には溶け合ってあるのかもしれない。
衣真一郎も風景の絵を描く。彼は、生まれ育った群馬の風景を描く。近年では、アイスホッケーをモチーフにレジデンスで訪れたカナダの地も描いているが、それも幼少期に衣自身がやっていた経験によるところが大きいだろう。彼が描く風景は、必ずしも一般的な風景画とは異なる(それは平野もだが)。彼は写実的に風景を描くのではなく、自身の得てきた感覚・体験・記憶を交えて具体的に描いている。その具体性は、構図やタッチ、絵画を構成する全てに現れている。キャンバスや木板に乗せられる絵具ひとつひとつが慎重に丹念に乗せられているし、そのストロークやタッチも時間や重さが固有にある。ひとつの風景画としてあろうとしながらも、そこに制作に使用される物質や個に由来する感覚、記憶を屈服させないこと。衣の作品は、それが可能であることをありありと、そして淡々と私たちに掲示する。
衣も平野も風景をベースに描いているという点では共通しているが、それのみで今回の展示が構成されていることはない。風景も、絵画も、この手のテーマを議論の爼上にあげることは、なかなか勇気のいることだ。あまりにも定義が広く、揺らぎやすいこれらのテーマの方へ2人の制作を持っていくことに今回終始するよりは、テーマをこの2人の活動や人間性それ自体に寄せて精細に見ていくことの方が、「風景」や「絵画」を携えてまた、人と土地や環境への関わりを考える私たちの契機となるだろう。
グループ展に出展します。
Directors’ Selection – FOCUS
木村 剛士 / 杉山 卓朗 / 平野 泰子
2022.01.21 Fri - 2021.02.19 Sat
この度、テヅカヤマギャラリーでは木村剛士、杉山卓朗、平野泰子の3組のアーティストによるグループ展「Directors’ Selection – FOCUS」を開催いたします。
今展はテヅカヤマギャラリーにて展覧会の企画を行う3名のディレクター各々が独自の観点でアーティストを1組選出し、紹介するという企画展です。これまでに2013年、2017年、2018年、2020年と過去4回にわたり、同様の趣旨の展覧会を開催し、今回が5回目の開催となります。
宮城県出身の木村は人間の内面的な要素とその周りの環境や社会のつながりをテーマにしており、今展ではブロンズでの彫刻作品を中心に新作を発表いたします。杉山は千葉県出身、作家のイマジネーションや主観的なものを排除したその絵画からは高い緊張感を感じさせます。富山県出身の平野は何層にも渡って薄く塗り重ねた色彩の中に、非常に深みのある空間を感じさせる絵画を制作しています。
3名の異なる要素を持ち合わせた作家がどの様に共鳴し合うのか、是非、この機会にご高覧くださいませ。
【出展アーティスト情報】
木村剛士 | Takeshi Kimura 1980年、東京都生まれ、宮城県出身。多摩美術大学院美術研究科彫刻専攻を修了。 周囲の環境は「自分の体を裏返したもの」という視点から、地域の食文化や周囲の 自然環境とをつなごうとする制作を行っており、彫刻を内包する造形性も含めた 様々な特性を社会的な要素も含めて取り巻く環境として捉えようとする彫刻制作 を行っている。 主な個展に「IN CONCRETE」(FEI ART MUSEUM YOKOHAMA / 2017)、「N.E.blood 21 vol.60(リアスアーク美術館/2017)。主なグループ展に「新鋭作家展<ざらざらの実話>」(川口市立アートギャラリー・アトリア/ 2020)、「六甲ミーツアート芸術 散歩」(六甲山 / 2020)、「ART MIYAGI2019」(宮城県美術館 / 2019)、「あきたの美術 2016」(秋田県立美術館 / 2016)、大地の芸術祭 KAMIKOANI PROJECT AKITA2015 (秋田県上小阿仁村 / 2015)など。 杉山卓朗 | Takuro Sugiyama 1983年、千葉県生まれ。大阪美術専門学校研究科を修了。キャンバスを前にして起こるイマジネーションや衝動を廃して、線や面を反復、再構築しながら絵画を制作。 イメージの生成において、作家自身の介入を最小限にとどめた制作方法を用いている。マスキングを使わずに描きながらも肉筆という霊性からも限りなく遠い絵画表現を目指す。 主な個展に「周縁と方法」(五台山竹林寺 / 2017)、「LOOP」(ASYL [元梅花堂] / 2014)。主なグループ展に「設定と接点」(Nii Fine Arts Tokyo / 2021)、「SPR」(FINCH ARTS / 2020)、「paint( )ings」(Yutaka Kikutake Gallery / 2018)、「江之子島芸術の日々2017『他の方法』」(大阪府立江之子島文化創造センター / 2017)など。 平野泰子 | Yasuko Hirano 1985年、富山県生まれ、神奈川県在住。京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻を卒業。 作品の根底には「風景」があるが、絵の具を幾層にも塗り重ねる行為によって生まれる空間や現象に注目するようになる。制作の中から生まれる眼差しや不確かなものに強度を持たせるために制作している。 主な個展に「Twilight」(masayoshi suzuki gallery / 2009)、「Twilight」(masayoshi suzuki gallery / 2012)、「呼びかけられる」(Gallery PARC / 2018)、「不確かな地図」(CALM &PUNK GALLERY / 2018)、「Yasuko Hirano: Unfold Room」(Gallery stoop / 2020)。主なグループ展に「VOCA展2015」(上野の森美術館 / 2015)、「New Positions 2021」(taguchi fine art / 2021)など。
Tezukayama Gallery
Yamazaki Bldg. 2F, 1-19-27 Minami-Horie, Nishi-ku, Osaka, 550-0015 JAPAN
更新日:2021年10月2日
グループ展に出展します。
Pictorially yours,
展覧会概要
□ 名称: Pictorially yours,
□ 会期: 2021年11月1日(月)-13日(土) 12:00-19:00 (日曜休廊/最終日17:00まで)
□ キュレーター: 大島徹也(多摩美術大学 准教授)
□ 出品作家: 小川佳夫、金田実生、小池隆英、中小路萌美、平野泰子、森川敬三、山口牧子、
吉川民仁
□ 企画: 表参道画廊
Work : Tamihito Yoshikawa, Gentle Wind, 2021 Design : Moemi Nakakoji + Tetuya Oshima
□ 趣旨:
「Pictorially yours,」は、英文手紙の結辞「Sincerely yours」(敬具)と「pictorial」(絵画の)という英単語を合成した造語です(英語として通用するかはさておき、字面から意味を何となく感じ取っていただければ充分です)。本展はいわば、観客の方々に宛てられた一通の手紙のようなものとして構想されています。
現在12名の作家と1名の美術史研究者からなる「Studio 138」という芸術研究会(2019年設立)があります。このたび、そのStudio 138の作家メンバーを主体とするグループ展のオファーが、表参道画廊から同研究会の方にありました。そこで、その1名の美術史研究者がキュレーターとなってStudio 138の作家メンバーの中から8名を選び、「Pictorially yours,」展として彼らの仕事をご紹介する次第です。
本展の出品作家たちの間には、全員が画家でありかつ上記の研究会のメンバーであること以外に、全体的な共通性は特にありません。世代的には50代が多いですが、30代も二人入っています。また、皆いわゆる「抽象」的な画家ですが、その度合いや問題意識には一まとめにして扱い難い違いがあります。
出品作家の中には、小池隆英や森川敬三のように、非対象の茫漠とした絵画空間を創り出す者もいれば、金田実生や中小路萌美のように、現実世界との視覚的関係性をある程度保持している者もいます。しかし、色彩同士の関係の問題に集中する小池がニュートラルに無題を貫くのに対し、森川は観者に連想を誘発するタイトルをしばしば用います。また、金田が自然現象中に漂う気配や外界に流れているエネルギーのようなものに関心を向けるのに対し、中小路は、彼女が目にする風景の構造へと迫り、世界の在りようを絵画として探り直していきます。吉川民仁と小川佳夫はともに、左官コテあるいはペインティングナイフによる絵具のペインタリーな扱いを特徴としていますが、吉川がその鋭敏かつ繊細な感受性をもって、自分を取り巻く自然から創造のインスピレーションを豊かに得るのに対し、小川の仕事は、画家としての彼と彼の人間存在の内奥にある何か衝動的なものや情動的なものとの対峙を感じさせます。山口牧子と平野泰子は、支持体と絵具層の関係ないし構造に関して、それぞれ興味深い実践をなしています。山口は麻紙の支持体に襞を寄せ、その裏面から表面へと絵具を滲み出させたりしながら、透明感と流動性のある複雑な色彩空間を作っていきます。平野は、サンダーで入念に研磨したフラットな石膏下地の上に何層もの異なる色彩を薄く塗り重ねる先に、崇高ささえ感じさせる深遠な絵画世界を生み出します。
本展の8名の出品作家たちの仕事はこのように多様ですが、彼らに関してここでひとつ確かに言えるのは、この時代にあって彼らが、絵画の持つ力をなお深く信じ、絵画としての表現、絵画というミディアムの新しい可能性をひたむきに探り続けているということです。これを本展のメッセージとし、本展に出品されたそれぞれの作品、そしてそれらが響き合う展示空間全体から、彼らの探求の意義を感じ取っていただけたらと思います。 (大島徹也)